algonote

There's More Than One Way To Do It

創業CTOは安易にVPoEを採用しようとしてはいけない

独自理論を提唱してみる

CTEO体制から成長時の苦悩

技術職のキャリアパスとして最近は技術専門性に特化したIndividual Contributorなども注目されていますが、逆に管理もやるような職種がCTOと呼ばれることが多いように思います。

スタートアップ初期のCTOは実装面でもリードしつつ、管理職もやるのでCTEO(Chief Technology and Engineering Officer, この記事内の造語)的であります。無事事業が成長しフェーズが上がってくると人数も増え、チーム分割やマネージャーのマネージャーをやる必要があり、もちろんチームを一つ任せられる人を既存メンバーから出すか、新たに採用する必要があります。

チームを任せる人をうまく見つけられなかった場合に、キャリアパスとしてエンジニアリングマネージャー(EM)かテックリード(TL)かの二分論だけでなくプレイングマネージャー(mini CTEO)を産み出すことで組織の業務を吸収できる幅を増やせないかというのが以前の提案でした。

zenn.dev

同様にマネージャーのマネージャー、大企業で言うところの開発部の部長的ロールが抱える業務を分割する際の一つのパターンがCTOとVPoE(Vice President of Engineering)でそれについて今回論じていきます。

CTOとVPoEの棲み分け

エンジニアリングマネージャーやプロダクトマネージャーも企業によって定義がブレがちなので、CTOとVPoEでも企業によって役割が違いがちなのですが、CTOはどちらかというと技術選定やアーキテクチャーや技術的投資の方針を担うことが多いように思います。逆にVPoEは文化や組織、教育、人事評価や採用面を見ていることが多い印象です。

VPoEが存在しない組織もあって、例えば伝統的日本企業では技術者出身の人が昇進して部長になり、技術面もマネジメントも見ていることが多いように思います。

人事評価や部内体制については確かに責任を持つのですが、採用は新卒がほとんどなので業務が軽くなっている面はあるかもしれません。人手不足もあって、中途採用の比率は年々上がってはいるのですがそれでもまだ新卒採用の方が多いです。

ベンチャーキャピタルの方がアメリカの事例を持ってきて、成長期にCTOとは別にVPoEを採用することをすすめることもあるのですが、伝統的に日本企業は新卒採用主義なので、大企業の部長級の人を引っ張ってこれたとしても、VPoEの仕事内容のうち内部的な組織面のスキルを持っている確率は高くても、採用面は解決できない可能性があります。急成長のつらみはスタートアップ特有です。

ユニコーン企業が注目されるようになったのが最近なのもあるかもしれないですね。日本市場においてマザーズの小粒上場がメインストリームだったので、過去VPoEが必要になる前の少人数で上場したケースが多かったとすると、ユニコーン世代は前の世代から学べないです。

成長につれて役割が変わるのはCEOでも普通で、創業CEOがトップから外れた例も少数ながらあるのですが、そう多くはなく、フェーズが変わるにつれ業務内容を変えていけた会社が伸びているように思います。

創業CTOはCTOとVPoEどちらになりたいか

そういう意味で創業CTOは安易にVPoEを採用しようとしてはいけないというのは一つの仮説として言えるかもしれないです。創業CEOがトップから外れられないのと同様に、日本においては創業CTOがVPoEにシフトできる会社の方がグロースできる可能性があるということです。

一説によるとエンジニアにプレイヤーを極めたいか、管理職になりたいかと聞くと9:1くらいでプレイヤーを選択するそうです。ちゃんとした統計があるわけではないのですが、創業CTEOがCTOとVPoEどちらになりたいかと聞くと体感同じくらいの比率でCTOを選択することが多い気がします。

技術面を見た方が既存の業務の延長ですむというのもあるのですが、基本的にエンジニア採用の目標というのは未達で終わることが多くつらみがあるのも大きい気がします。VPoEになるというのは人事評価上、未達の部署への異動の辞令をもらうに近くなります。

事業成長期のペインポイントは組織面だけでなく、例えばモノリスからマイクロサービスへの移行だったり、パフォーマンス上の課題だったり技術面はもちろんあります。技術面の成長痛を解消するのが簡単というつもりはないのですが、機械学習や創薬だったり研究ハードテックを売りにしない事業会社に近い業態の場合、需要と供給上、VPoEの方が希少性が高くなることがある可能性はあります

ちょっと違うかもしれないですが、CFOもCTOより後のフェーズからジョインして、CTOよりよい待遇で採用されている例はある気がします。

SaaSブームの中でアプリからWebへ少し回帰してきたのもあるかもしれないですね。(ウェブ)フロントエンド、バックエンド、インフラ全てわかる人なら探せばいそうですが、それプラスiOS、Androidわかる人は要件が厳しかった感覚があります。

CTEOを事業部CTEOに分割できるか

問題ばかり書いていても生産的でないので提案を一つしてみると、VPoEを採用できなかった場合、CTEOを事業部CTEOに分割するのも一つの作戦のようには思います。EM、TL論でプレイングマネージャーの3パターンにしたのと同様に、CTEOはCTEOのまま分割できないかと。

企業によって呼び方は様々ですが、複数サービスを運営している企業の場合、事業部ごとに事業部CTOやHead of Engineeringを置いていることがあります。仮に1サービスのみを運営している企業でも機能軸で似たようなスキームに落とし込めないかと。

チーム分割でも専門性ごとに分割するよりもまず機能軸で分割したほうがスモールチームで一体感が出て上手くいくケースが多いように感じます。その延長でCTEOでも機能軸で分割できる可能性はないかと。

二頭CTOはそれはそれで意見が食い違って崩壊したパターンも見たことがあるので銀の弾丸ではないのですが、創業時の株分割と同様に51%: 49%というか意見が割れた際はどちらかを優先というルールを設ければリスクは減らせます。

VPoEを採用できれば解決する問題なのかもしれないですが、仮にEM含め既存の管理職がCTO的だった場合、みんなでCTEO的ロールを担い、つらい部分から逃げないのも一つの選択肢のようには思います。

所感

CEOでも資金繰りから逃げない方がよいというアドバイスがあるみたいですね。

途中からジョインしたCTOにとっては寝耳に水というか変わったのは会社の方と感じることもあるかもしれないですが、共同創業したようなケースに置いて、CTOは自分のロールを変えていく覚悟があった方が上手くいくケースが日本においては多いのではないかと思いました。