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There's More Than One Way To Do It

AssessOpsを提唱してみる

組織構造は評価の運用も考慮して

前口上

DevOpsという用語があります。ソフトウェア開発を開発担当(Development)、運用担当(Operations)と完全に分けるような構成をとるより、開発と運用はより協調して、時には兼任した方が変化に素早く対応できるという考え方です。

ソフトウェア開発(直訳だとDevだがここでは日々の業務でOps)と人事評価'(Assessment)もしばしば独立したものとされることが多いですが、極力一緒になった方がいいのではということでAssessOpsを提唱してみます。

ジョブ型雇用には評価制度の設計・運用がより必要

伝統的に日本はメンバーシップ型の雇用と言われています。終身雇用で一つの会社に属し、数年ごとにジョブローテーションでやることが変わります。

一方で最近はジョブ型に近い雇用も増えています。専門性は気軽にスイッチできるものではないとして、専門性に応じたグレードで待遇が変わります。

背景には統計的に日本の生産性が低いことがわかってきたからというのもあると思います。生産性は必ずしも効率の低さだけが原因でなく、市場規模の大きい海外で売り上げをだせていなかったり、地政学的要因もあるのですが、とはいえメンバーシップ型は会社視点で見るとコスパが必ずしもいいわけではないということが分かってきたわけです。

ジョブ型はメンバーシップ型より評価制度の設計・運用にノウハウが必要になります。勤続何年だからこの評価といったような機械的割り当てができず、専門性を評価できる能力が評価者により求められるからです。

評価者が日々の仕事ぶりをちゃんと見れているか

日本の低賃金もしばしば話題になりますが、高賃金をだすためには労働者間格差をつけ、メリハリのある評価をすることも重要です。給料の上がらない会社はそもそも評価制度がない、弱いことも多い

評価制度は作ることも大事なのですがそれ以上に運用に乗せるのも重要です。

日本は他国比で派遣が多く、ソフトウェア開発でも事業会社が内製開発チームを持っていることは少なく、開発会社が別枠になっていることが多いのがユニークな部分です。コロナのあおりを受けた会社でも解雇はせず他社へ出向となったケースもありますね。

解雇規制の強さとビジネスの変化への対応を最適化した結果ではあるのですが、評価制度自体の良しあし以前に評価者が日々の仕事ぶりをちゃんと見れているかというと見れていないことが多いのが日本社会ではないかと。

出向している会社で人事評価をしないといけないのに、出向元の会社では日々の働きぶりをそれほど見れていないというのは普通にありそうですよね。

チーム構成を決めるときはアセスもセットで

AccelerateやTeam Topologiesの日本語訳がでたせいかFour Keysだったり、開発生産性を最適化するノウハウ自体は少しコモディティ化した印象があります。

一方で評価制度は?と言うとそれほどノウハウはたまっていない印象を受けます。

Zennの記事からの引用ですが、例えば以下のような組織構造があったとします。一番左のチームの評価者はだれでしょうか?

組織のEMをベースに複数人が文殊の知恵形式で決めていれば及第点、追加で技術力評価会なんてあるとなおよいかもしれないですね。

一方で、なぜか隣のチームのマネージャーが評価することになっていたり、たいして話したことがないVPoE(大企業なら部長など)が評価する組織も往々にしてある気もします。業務と評価がねじれているというか

評価結果も大事だがちゃんと見られている感はもっと大事

例えば年収が一定水準に達すると幸福度はさほどかわらないという話もあります。孤独で幸福度が下がるという話もありますね。

年収のトップラインをあげるためには評価制度の運用、正しく評価することが大事なわけですが、そもそも評価者がいない、いうほど日々の働きぶりを見れていない組織も案外多い印象があります。

人事評価は評価の結果がいいことも大事ですが、それ以上に日々の働きぶりを元に評価されている感が大事なのではないかと

Gitのログなどから開発生産性もある程度だせるようになると、人間はそれを最適化しようとしがちです。ただ、それは結構短期なものの見方をしている可能性もあって、組織構造を考える際は評価の運用もセットで考慮するAssessOpsが重要なのではないかと

CTO/VPoEが人事によりすぎると黄色信号化かも

そういう意味で技術組織においてCTO/VPoEが人事によりすぎると黄色信号な可能性はあります。Your CTO Should Actually Be Technicalという記事もありました。

blog.southparkcommons.com

人事評価は行動特性だったり技術だけが評価軸ではないのですが、技術は日々移り変わっていきますし、現場から離れた時間が増えるにつれて、とりわけVPoEの技術力が下がると評価を外す率が増えるようにも思います。

結局専門性を評価できるのはその専門がある人で評価者の技術力が一番である必要はないですが、人事専任化する抵抗感はもっとあった方がいい。

役員なら業務がなくても自力で育つのは当然ではあるのですが、例えば大きめのレビュー会には参加したり、組織構造上評価者の技術力が下がりすぎないよう何らかの工夫があると系として完成しているようには思います。