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急成長組織でも評価制度は必要だが目標管理制度はあっていない

評価制度と目標管理制度による評価制度は包含関係

急成長組織に評価制度は必要か

スタートアップのような急成長組織に評価制度は必要かというのは度々議論になるポイントです。シードアーリーよりで小チームの場合、少ない人数で回すためにマネージャー不在やプレーイングマネージャーがいるのみで専任のマネージャーがいないのもあるかもしれません。

評価をするのが億劫で全員一律の企業、自己申告ベースの企業、各々が仮想的な社内通貨でマイクロ取引をする企業など色んな業態があります。

一方でOrganizational Blueprints for Success in High-Tech Start-Upsというレポートでは意外と官僚型組織の成長率が高かったり、上場前後でパフォーマンスのよい組織形態が違うことが示唆されています。

実際Netflixの事例では一律の評価制度だとうまくいかず崩壊し途中で評価制度を変えたようです。

急成長組織の評価制度はどうすれば崩壊を防げるでしょうか?

評価制度と目標管理制度による評価制度は切り分けるべし

まず、評価制度と目標管理制度による評価制度を切り分ける必要があります。

一般に評価制度というと1年か半年に一度目標を立て、それを達成したかどうかで評価が決まるようなイメージを持っている人も多いのではないでしょうか。このManagement by objectives (目標による管理)は元を正せばドラッカーが提言したものをベースにしています。もしドラ、もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもベストセラーになりましたね。

ただ、ドラッカーの書籍「マネジメント」は1974年の本です。50年前に発案された手法を割合多くの企業が採用しているのは驚異的ですね。そういう意味で目標管理制度による評価制度は評価手法の一つでしかないわけですが、あまりにも流行ったゆえに両者を同一視している人も結構いるように感じます。

例えば、Ruby on Railsで有名なDHHの会社Basecampではその人が転職したらどんな待遇になるかを測った上で数割上乗せした待遇をその人の待遇としているようです。GoogleのガイドにはOKRは従業員を評価するためのツールではないと明言されているのですが、評価制度としてOKRを評価に使っている会社もちらほらあります。

安定期の企業は目標管理制度と相性がいい

T2D3という言葉があります。SaaS企業が投資対象になりうるかの事業計画の評価指標で5年で3倍、3倍、2倍、2倍、2倍と成長していくモデルです。インターネット業界にいると毎年倍以上成長というのがもしかすると起こりうることと享受してしまっていることも多いですが、この成長率はとても驚異的で例えばトヨタの売上高の成長率は5.8%です。

管理会計なんて言葉もありますが、事業計画の見込みのブレがどちらの方が少ないかで言えば当然成熟し安定期にいる企業でしょう。急成長企業や大企業でも新規事業の部門にいるとピボットという名のもとやることがコロコロ変わることもありますし、個々人の目標以前に企業、部門の大目標の安定度がなさすぎます。

そういう意味で自分の所属企業(部門)の年次成長率が何%かは議論のベースにあるべきで、目標管理制度は安定期にある企業の方が向いています

(小規模)急成長組織は市場とベンチマークするのが一番楽

では急成長組織だとどんな評価制度を採用すべきでしょうか?

評価とモチベーション向上を分けるのは一つのやり方ですね。モチベーション向上だとOKRは4半期がベースです。VUCAの時代では1年に1回の目標管理制度よりは事業の変動に追従はできます。一方で小規模組織だとそもそもの大目標OKRの策定コストが高いです。

(小規模)急成長組織は市場とベンチマークするのが一番楽というのはありますね。評価制度の曖昧な企業は採用基準も曖昧というのはよくある話で、なんとなく給料安くても入ってもらえそうなので採りましただったり、既存の人員の評価制度と実力に一貫性がないこともあります。

急成長組織ではないですが、エキサイトの事例でも人手不足の中で実際には手を動かす人の方が需要があるのに評価制度上は管理職にならないと給料が上がらないなどねじれが見られました。感度が高すぎても問題が起きることは確かにあるのですが、知らないより知っている方がいいので、市場とある程度ベンチマークしないとズレは大きくなります

そういう意味で採用基準と評価制度を同時に練り上げながら、ミッション・ビジョン・バリュー軸での社内独自評価と合わせて大枠で初期は評価するのではないでしょうか。富士通の事例では急に変えたので崩壊したので、段々と事業の成長率がとまってきて安定期に移りそうなタイミングで徐々に細かい目標管理制度を導入していくと緩やかにトランジションできそうです。

AssessOps視点だと評価制度がまわっていない企業はそもそも組織構造も定まっていないこともあるので評価制度と組織構造を合わせて整合性をとっていくのも大事ですね。

共通認識は評価制度以外でも取れる

目標管理制度による評価制度は企業が従業員に期待することのすり合わせの場でもあるわけですが、その整合性をとるやり方は必ずしもそれだけではありません。

例えば月一の定例でCEOが敢えて同じことを繰り返し言っているという会社さんもあります。chocoZAP運営のライザップでは相当数の有償ストックオプションが割り当てられています。

所感

その他の視点として日本のスタートアップはそれほど多産多死でない、急成長していない中小企業でしかないので目標管理制度でも十分という考え方もあります。

資金調達向けのラベリングと事業実態は分けてもいいのかなというところ。