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IT企業の評価制度を設計してみる

評価制度設計の一例

前口上

仕事の報酬を考えた時、個人としてはもちろん5000兆円欲しい訳ですが、経営者視点で見ると投資効率へのプレッシャーを投資家から受けたり、事業が上手くいかなくなった際の倒産確率を低めるためにも、全ての従業員を5000兆円で雇うわけにはいきません。

一方で少子化やIT化の流れの中で、IT系の人材は需給上労働者側有利なのも事実で、伝統的日本企業モデルで新人から定年退職までにゆっくりと昇給するような賃金カーブは乖離が生じがちです。

海外や他社の事例を踏まえつつ、いいところを本記事では狙ってみます。

自分の得意な職種だけ厳しくしない

まず評価制度を作る上で一番しがちなミスは自分の得意な職種だけ厳しくしてしまうだと思います。

エンジニア出身の人ならエンジニアの評価はわかるけれど、デザイナーやPMとなるとさっぱりだったり、営業出身の人なら営業目標は立てられるけれど人事や広報だとさっぱりだったりするのはよくある話だと思います。

そういった際にしばしば創業者出身の職種だけ評価制度が厳しくなりがちな傾向はある気がして全体のバランスは大事です。

ITスキル標準(V3 2011)では人材のレベルを7つに分け、以下のように定義しています。まずはこれをベンチマークにして各専門性のレベルがどこにいるかを評価するようにすれば、評価が苦手な職種でも実態とのずれを減らせると思います。各社自由に評価グレードを設定しても良いのですが、せっかくIPAが時間をかけて検討したものですし、独自要件を追加するにしてもリファレンスがあるとよいかと。

人事評価で一番有名な手法は期の頭に目標を立てて期末に評価する目標管理制度だと思うのですが、とりわけ0=>1に近いスタートアップだと1年後には大目標が変わっていたということもままありあまり向いていないと感じることもあります。

成熟期のサービスでも他業界比で変化が速いと言われるのがIT業界ではあるのでとりわけWeb系の企業だと目標管理をするにしても、ベースの部分にミッショングレード制に近い指標を持つとブレが減らせるように思います。

海外企業の評価制度を職種のレファレンスにとってみる

評価指標自体の大枠が決まったので、次は各職種ごとの待遇を決めていきましょう。levels.fyiは海外の企業の評価制度がまとまったサイトで一つの参考になります

エンジニアだけでなく営業などのBiz系の職種も載っています。試しにGoogleを見てみましょう。

開発系で一番人数が多そうなEM、エンジニア、(テクニカルでない)PM、デザイナーでみると以下でした。各社違いはあるのですが、概ねEM・エンジニアが一番強いですね。(2022/09/06追記: 集計ミスを修正)

同じL5のグレードでBiz系のメジャーな職種も並べるとこうです。

職種の相対待遇はGAFAでも結構会社ごとに違い、色が出ます。Googleは意外と営業が強くデザイナーが弱い会社ですね。思い返すとGoogleのサービスは控えめにいってすごくシンプルなデザインが多かったように思います。

ざっくりBizDevを1として

  • EM: 1.44
  • エンジニア: 1.44
  • PM: 1.32
  • デザイナー: 1.24
  • データサイエンティスト: 1.24
  • 営業: 1.16
  • 人事: 1.08

といった感じでしょうか。あくまでGoogleではなので自社と近い業態をベンチマークにとった方がいいかもしれないです。

また、日本ではまだ職種間ギャップがアメリカより少ない感覚があります。BizDev比でエンジニアの待遇が足りていないのならそこは人材不足というより待遇不足ですかね。

日本のIT産業給与実態調査

日本のデータも見てみましょう。経済産業省のIT関連産業の給与等に関する実態調査結果だと以下のようになっています。

報告の中でレベル1からレベル3までの給与上昇が緩やかと報告されています。

データが少なくてレベル6と7が一緒になっていますが企業サイズ的に妥当かもしれないですね。ラーメン屋より多いという日本のIT企業だと世界的な専門性を持っていても持て余してしまうというか。研究部署やコミッターを雇っている企業はありますが。

GoogleやFacebookのエンジニアの数が3万人程度。一般的な日本のメガベンチャーは全体で3,000人程度の企業が多いようには思います。エンジニア比率半分なら1,500人ですね。

5.6^6=30,8405.6^4=983です。Googleの6段階を日本の6段階と比較すると規模が違いすぎて、ざっくりGoogleのグレード4つ分がITスキル標準の6段階に当てはまるとすると合っている気がします。

実際GoogleのエンジニアはL3=>L6で2.6倍昇給しているのですが、実態調査だとレベル1からレベル6で2.6倍昇級しています。

Future Works

前職給与ベースで採用しまくってしまった会社の是正アイディアなどもあるのですが、力尽きたのでまた時間見つけて記事を書きたいと思います。