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There's More Than One Way To Do It

Manga Translation Battleに落ちたので振り返る

Manga Translation Battle vol.6に参加し、木っ端微塵に落ちたのでその振り返り。

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Manga Translation Battleとは

Manga Translation BattleはMyAnimeListが開催しているマンガの翻訳コンテスト(日→英)。お題となるマンガを翻訳して競い、勝つと賞品がもらえる。賞品はいくつかある内から選べ、例えば優勝者はMacbook Air 13-inch 128GBをゲットできる。

ちなみに主催のMyAnimeListは2015年にDeNAに買収されている。

モチベーション

やってみた動機として単純に漫画の自動翻訳に興味があったというのが一つ。郷に入れば郷に従えというか、実際人力での翻訳をやってみてわかることもあるのかなと。

もう一つは通訳案内士法の改正。

今まで日本において通訳ガイドをするには通訳案内士の資格がないと有償ではできなかった。2018年1月4日施行された法改正によりこの資格は単なる名称独占資格になった。

誰でも通訳ガイドをしてお金がとれるようになったので翻訳スキルあげといても損はない。

自分の実力

仕事で通訳や翻訳をすることもあったが内容は技術文書や営業で基本ビジネス英語。マンガはほぼラフな口語でそのうえ「米語と英語を使い分けて」といわれると大分つらい。

最近NHKラジオ講座の教科書にものっているCEFRという指標があり、A1~C2の6段評価でNon-Nativeを格付けしている。過去ケンブリッジ英検のCAEを受けた結果からいうと(二回受けて全部落ちた😭)、リーディング以外はC1(上の下)でトータルでB2(中の上、体感TOEIC900くらい)。

翻訳する場合、相手先言語がネイティブ(C2より上)であることが多いと思うのでけっこう厳しい。

今回のお題

今回のお題は以下の3つ。全作品提出してもいいらしい。

  • ハチ参る
    江戸時代の話。拾われた犬が病気の主人のために伊勢参りする。

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  • であいもん
    バンド解散に伴い京都の実家(和菓子屋)に帰ったら、知らない女の子が後継と言われた。

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  • ニューヨーク・ニューヨーク
    ニューヨークでのゲイの恋愛話。

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ハチ参るは長かったのでパス。ニューヨーク・ニューヨークはゲイの話でやる気が削がれたのとニューヨーク訛りがよくわかっていなかったのでパス。

であいもんは日本の話で京都訛りの部分どうするの問題はあったが、短い会話が多めで和菓子の名前もある程度答えが決まっていたのでこれを選択。

結果

結果、落選。

当然のごとくどこが悪かった等のフィードバックはないので、掲載されている3人のファイナリストの翻訳を比較してみる。

例1: この色合い 香り 口あたり そして適度な甘さ…ッ うまい!!

a: WHAT COLOUR, AROMA, AND TEXTURE. AND THEN, THAT WELL-BALANCED SWEETNESS... YUM!!

b: THIS COLORING! AROMA! FLAVOR! AND JUST THE RIGHT TOUCH OF SWEETNESS! DELICIOUS!

c: AH, THAT DELICATE HUE. SUCH FRAGRANCE AND TEXTURE. AND JUST THE RIGHT SWEETNESS. DIVINE!

自分: This color, smell, taste And good sweet. Yummy!!

この香りは感嘆なのでthis colorは誤訳。香りはsmellよりaromaの方が自然か。裏のニュアンスというか。全端的に自分の訳は文が直訳調になっていて感情成分が少ない。

例2: どの面下げて無駄に明るく入って来とるんじゃッ

a: YOU SURE GOT SOME NERVE TO COME WALTZIN' IN HERE WITH A BLOODY USELESS GRIN ON YOUR FACE!

b: YOU'VE GOT SOME NERVE, BOY, TO BE WALKING IN WITH A GRIN ON YOUR FACE

c: YOU HAVE A LOT OF GALL HAPPILY STRUTTING BACK IN HERE.

自分: Why can't you come back with that attitude?

そもそも肯定文で書けていないというのもあるが表現がこなれていない。have got some nerveはいい神経しているって感じかな。どの面下げてをgrin on your face=ニヤつきながら と訳すのか。難しい。

例3: 子供のくせにえらそうに言うやん 話わからへんにゃし引っこんどき

a: YOU'RE TOO FULL OF YOURSELF FOR A LITTLE KID. YOU JUST DON'T GET IT, SO BUZZ OFF ALREADY.

b: THAT'S SOME BIG TALK COMING FROM A LITTLE KID. BUZZ OFF, SHRIMP. YOU'RE CLEARLY NOT GETTING IT.

c: DON'T ACT SO HIGH-AND-MIGHTY, KID. JUST SCRAM, YOU DON'T UNDERSTAND.

自分: You says like a boss. Go back cause you are child

活用間違っているし子供のくせにが後ろに移動している。coming fromを使うのか。話わからへんにゃしが抜けている。buzz off=消え失せろ。バズるのバズか。

所感

翻訳そのものの下手さもそうだが、単純なミスも多い。締め切りギリギリでやっていたのもあるが、提出フォーマットにも一因がある気がする。フォーマットはこういうの。

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何ページ目の何コマに誰が何のセリフを言ったか書くだけでも大変だが、FXや強調、手書き指定等細かく独自マークアップがありだいぶ複雑。

漫画だから左右ビジュアルで横に並べて、テキストボックスで上から訳していきたいところだが、今回のフォーマットは単なるテキストデータだった。プロの翻訳家もこれでやっているんだろうか?

ツールないと翻訳以外のところに脳内ワーキングメモリ使わされてつらいなあと思いました。